殴り込み

ギンティ小林 新耳袋 殴り込み 第一夜
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新耳袋シリーズの中でも「山の牧場」と「八甲田山」を収録した第四夜は異質だった。

幽霊の出て来るいわゆる「怪談」とは違う、この世のルールの埒外に存在する何かがこの世にぬるっと入り込んだ気持ち悪さ、まさしく「怪異」と呼ぶしかない現象を文章化した名作だった。

この何が起こるか、何が出て来るかわからないそんな場所に、著者のギンティ小林をはじめとして何人かの男たちが殴り込みをかけるというバカ企画である。

真相解明を求める向きには食いたりなさが残るかもしれないが、むしろギンティ小林の心の推移のドキュメンタリーとして捉えれば、とても面白い読み物だと思う。

体のほぐれた文章というか体温に近い文章というか。

特に編集者の松崎やコブラゲンといった空気の読めない他者が介在する時の文章は、べらぼうに面白かった。