高齢化社会の行く末は?
この本の後に読み始めた樋口毅宏の「タモリ論」に偶然載っていたのだが、この「恍惚の人」が売れて儲かったお金で、新潮社の別館が建てられたそうだ。
1972年のベストセラーである。
痴呆になった祖父に右往左往する家族の物語を嫁目線で描いた作品は、当時の人々にとっての少し先の未来の厄介事をテーマとしている。
ただ、この40数年の間に老人になり、死んでいった人達はまだましなほうだろうと思う。
時代が変わり、科学が進歩しても解決出来ないでいる問題であり、2018年の今読んでも恐ろしく今日的な課題をいくつも含んでいる。
しかし、もし今、同様のテーマで小説が書かれるとしたら、身寄りのない下流老人の痴呆問題、それに伴う事故や犯罪といったあたりが軸となって展開すると思う。
個人的にこの小説を読んで一番驚いたのは、主人公の夫婦がセックスレスでないところ。
この時代にはまだセックスレスは顕在化してなかったのか?
この部分の方が時代の変化を感じさせると思った。